ひらめき

今回は、前回からの続き、ファンダメンタルズ分析についてだったね!

女性

そうね!今回は「金融政策」や「財政政策」についてよ!

前回は、「ファンダメンタル分析とは何か」ということ、また、ファンダメンタル分析の3つの柱の1つである「経済指標」について解説をしました。

 

経済指標の中でも「GDP(国内総生産)」、「雇用統計」、「消費者物価指数(CPI)」は、特に注目すべき項目でしたね。

 

今回は、ファンダメンタルズ分析の3つの柱のうち残りの2つ「金融政策」「財政政策」について説明したいと思います。

 

テクニカル分析を全く行わずに、ファンダメンタルズ分析だけでトレードをするのはどんなベテラントレーダーにとっても難しいことだと思います。

 

逆に、テクニカル分析をしっかりとやった上で、ファンダメンタルズ分析を行っていくと、ファンダメンタルズ分析で得た知識をもとに、チャートの動きに根拠を与えながら見ていくことができるようになります。

 

テクニカル分析は、トレーダーが何よりも重視すべきものだと思いますが、ファンダメンタルズ分析を根拠の1つとしてトレードに生かしていけば、より確実で、大きな成果が期待できるでしょう。

 

初心者の方もぜひ最後まで読んで、ファンダメンタルズ分析を少しでも自分のものにしてみてください。

 

金融政策

金融政策とは何かといえば、各国の中央銀行がその国の経済を支えるために実施する金融面の政策全般を指します。

 

例えば、日本を例にとって説明すると、日本の中央銀行である日本銀行が、日本の景気が悪いときに、政策金利を引き下げたり、日本国債を買って市場にお金を流したりして、経済の活性化を図るといったことです。

その中でもFXの相場にも大きな影響を与えるのが政策金利の利上げや利下げです。

 

政策金利とは

では、政策金利とはどのようなものでしょうか?

 

世界の国々には、その国の通貨を発行する「中央銀行」があります。

 

日本では、日本銀行(日銀)、米国ではFRB(連邦準備制度理事会)、ユーロ圏では、ECB(ヨーロッパ中央銀行)、英国ではBOE(イングランド銀行)がそれにあたります。

 

中央銀行は、国の物価の安定化や景気の調整のために金融政策を行いますが、その1つとして行われるのが「政策金利」です。

 

政策金利とは中央銀行が一般の金融機関に貸し付けを行う際の金利のことです。政策金利の上げ下げに伴って、一般の金融機関が行う企業や個人への貸出金利も変動します。

 

例えば、経済が冷え込み物価も下落傾向(デフレ)のときに、景気を刺激するために行うのが政策金利の利下げです。利下げをすることで、企業や個人の資金調達も容易になり、経済活動を活発化させることができるという仕組みです。

逆に、好景気で経済に過熱感があり、物価が上昇傾向(インフレ)のときに行うのが政策金利の利上げです。利上げになると、企業や個人は資金調達が難しくなるため、行き過ぎた経済活動を抑えることにつながります。

 

政策金利は通貨高や通貨安といった為替レートに影響を与える大きな要因になります。

 

一般的に、利上げは、通貨高要因、利下げは、通貨安要因となります。

 

世界基準で考えた場合、金利が高いほど、より有利な条件で運用ができるため、資金は金利の低い通貨から金利の高い通貨の方に流れるのが原則だからです。

 金利の利上げ→通貨高の要因

金利の利下げ→通貨安の要因

各国の金利が現在どのように運用されているかを載せたのが次の表です。

参考:「最強の為替サイトZAI FX」

注目すべき中央銀行

世界各国にそれぞれ中央銀行が存在しますが、FXトレードをするうえで、ぜひ知っておきたい中央銀行は次の3つです。

 米国:FRB(連邦制度準備理事会 Federal Reserve Board )

EU:ECB(ヨーロッパ中央銀行 European Central Bank)

英国:BOE(イギリス中央銀行 Bank of  England)

米FRB

アメリカの中央銀行FRB(連邦制度準備理事会)は、米国の金融を牽引するだけでなく、世界の中央銀行のトップとして世界経済に大きな影響を与えています。

 

米ドルは世界の基軸通貨であるだけでなく、各国の外貨準備金としての需要も多い通貨であるためです。

 

FX市場でも米ドルの取引量は圧倒的に多く、通貨ごとのシェアは44パーセントと半分に近いシェアがあります。(BIS国際決済銀行 2019年のデータ )

 

このFRB統轄下で最大の注目を集めるのがFOMC(連邦公開市場委員会)です。

 

FOMCはFRBの理事7名に加えて、NY連銀総裁、地区連銀総裁4名で構成された総勢12名で構成されますが、年に8回、アメリカの金融政策についての会合を実施します。

 

FOMCは、原則として6週間ごとの火曜日、年に8回開かれますが、基軸通貨のドルに関わる国の金融政策がここで決定されるので、マーケットは大きな影響を受け、投資家にとって最も注目すべきイベントになります。

 

米国が利上げ(金利の引き上げ)をすれば、世界中のマネーが、安全性が高くなおかつ高い利回りが望める米国に流れ込みます。その結果、米ドル/円で考えれば、米ドル高、円安になることが予想できます。

逆に米国が利下げ(金利の引き下げ)をすれば、米国のドルは流出し、他の通貨が買われることになります。米ドル/円で考えれば、米ドル安、円高になることが予測できます

 

2020年3月にFOMCは新型コロナウイルスの経済への影響に対処するために、0.5ポイントの緊急利下げを行いました。この時、ニューヨーク外国為替市場では円が全面高、ドルが幅広い通貨に対し下落しました。

 FOMC政策金利

金利引き上げ:米ドル高、円安

金利引き下げ:米ドル安、円高

欧州連合ECB

ユーロ圏の金融を統括するのが、ECB(ヨーロッパ中央銀行」)です。ユーロ圏27か国にはそれぞれ中央銀行が存在しているので、ECBは各国の中銀を取りまとめる役目を担っています。

 

ECBはドイツのフランクフルトに本拠地を置き、総裁、副総裁と4名のECB役員会、そして欧州通貨同盟参加国の中銀総裁によって形成されます。

 

金融政策員会によって、ユーロ圏の政策金利が決定されます。金融政策委員会は、毎月、原則第1木曜日に開催されます。

 

日本時間で20時45分(冬時間では21時45分)に政策金利の決定結果が発表され、その1時間後に総裁の会見が行われます。

 

政策金利と総裁の会見のどちらも注目材料で、政策金利の決定が1つの材料、そしてECB総裁の会見がもう1つの材料、というように2つの材料があると考えておくとよいでしょう。

 

トレードをするときは、「金利発表後の一服まで」、と「総裁声明からの数時間」の2回に分けて考えることをお勧めします。

 ECB政策金利

金利引き上げ:ユーロ高

金利引き下げ:ユーロ安

 

仮に、ユーロ/円で取引をしていた場合、ユーロが上がれば円が下がる、もしくはユーロが下がれば円が上がる、とは限りません。

 

なぜなら、ユーロ円はクロス円の通貨ペアであるため、ユーロだけでなく米ドルの影響もうけるからです。

 

クロス円の通貨ペアについては、同じ「FXコラム」の「通貨ペアってなに?通貨ペアの特徴と通貨ペアの選び方!」で詳しく解説しているのでそちらをご覧ください。

 

要点だけ述べると、米ドル/円、ユーロ/米ドルがともに上昇しているときは、ユーロ/円は勢いよく上昇します。

米ドル/円、ユーロ/米ドルがともに下降しているときは、ユーロ/円は勢いよく下降します。

どちらかが上昇しどちらかが下降するときは、ユーロ/円は、互いの力を打ち消しあうので、どちらに動くかわかりません。

 

米ドル/円の動きにも注目をしておきましょう。

 

英国BOE

第2次世界大戦後、その座を米ドルに譲ったものの、それまでイギリスポンドは世界の基軸通貨でした。現在も英国BOEで行う1日平均の外国為替の取引量は世界一で、金融国としての存在感は健在です。

 

イギリス中央銀行BOE(Bank of England)は、ロンドンの金融街シティに本店があります。

 

BOEでも、最も注目されるのはやはり金融政策決定会合です。イギリスの場合はMPC(Monetary Policy Committee)といい、総裁、副総裁、そして7名の理事9人で構成されています。

 

原則、第1月曜日の後の水曜日か木曜日に開かれることが多く、よくECBの会合と同日になります。

 

このようなときは、ECBの決定事項の発表の45分後に、今度はBOEの決定事項が発表されます。引き続き、BOE会見、ECB総裁会見が行われるため、投資家にとっては大変忙しい1日になります。

 

BOEはMPCの2週間後の水曜日に議事録を公開します。実は、MPCの会合日も重要ですが、それと同様に、あるいはそれ以上に注目されるのが、この議事録のほうです。

 

金利変更の可能性が高い場合は、MPCの発表に注目が集まりますが、金利の変更の可能性が低い場合は、MPCの発表よりも、2週間後の議事録に注目が集まります。

 

そして、議事録の内容からは今後の金利政策の行方が占われ、それが市場を動かす材料になります。

 

仮に、金利が据え置きになったとしても、BOE委員の9名の意思表示の仕方によって、マーケットの受け取り具合や反応も違ったものになります。

 

例えば、9対0の満場一致で金利の据え置きが決定されていれば、「引き続き、現状の金利がしばらく続く」と受け取られます。

また、金利が据え置きになったとしても、内訳として相当数の委員が金利の切り上げ、もしくは金利の切り下げを主張していたと分かれば、マーケットでは「今後金利の切り上げ、もしくは切り下げが実施されるかもしれない」と受け取られ、相場の動きに影響を与えることになります。

 

ポンドの場合も、他の通貨と同じく金利引き上げになれば、ポンド高、金利が引き下げられれば、ポンド安になります。

 BOE政策金利

金利引き上げ:ポンド高

金利引き下げ:ポンド安

 

ポンド/円の取引をする場合は、ユーロ/円の場合と同様に米ドル/円の影響を受けるので、米ドル/円の動向にも注意しておくことが重要です。

 

 

財政政策

金融政策が日銀が行う経済政策であるのに対し、財政政策とは国が行う経済活動の収支(歳入と歳出)についての政策のことです。

 

例えば、日本の景気が悪化している時は、日本政府が積極的に財政支出を発動し、経済を刺激することにより景気浮上を狙います。

 

逆に景気が過熱している時にはその逆で、それほど積極的には財政支出は行わないのが普通です。

 

財政政策が為替相場に与える影響

財政政策でも為替相場への影響が大きい通貨は米ドルでしょう。

 

例えば米国で大統領が「大規模なインフラ投資(オリンピック関連のような公共事業)を行う!」といえば、米国の景気が良くなる→株が上がる→米国にマネーが流入するというシナリオで、米ドルの買い入れが進みます。そうなると、ドル/円の相場は、ドル高円安の方向へ動くと考えられます。

 

また、特に米国と中国の政治経済上の摩擦は、為替相場にも大きな影響を与えています。

 

米国が中国に対して厳しい経済政策を行えば、中国もそれに応酬するということ繰り返されるたびに、これまで為替相場は米ドルを中心に大きく動いてきました。

 

また、中国に原材料の輸入を大きく頼っているオーストラリアなどでは、中国の経済状況が直接影響を与え、為替相場を動かす要因となってきました。

 

米中の貿易摩擦は米国と中国だけの問題ではなく、世界じゅうの経済への影響が大きく、日本の企業中にも影響を受けている企業があります。

 

特に米国と中国との関係は、トレーダーとしても注意深く見ていく必要が今後も続きます。

 

 

まとめ

今回は、ファンダメンタルズ分析の3つの柱のうち残りの2つ「金融政策」と「財政政策」について解説をしましたが、いかがだったでしょうか。

 

金融政策については、特に政策金利を取り上げました。米国FRB、ヨーロッパECB、イギリスBOEの金利政策については注目しておきましょう。

 

また、財政政策では、米国や中国の政治経済の状況については、米国大統領選の結果も踏まえて、今後の動きに注意が必要でしょう。

 

これまでのテクニカル分析に加えて、ファンダメンタルズ分析も加えていくことで、より良いトレードが可能になると思います。ぜひ、各国のファンダメンタルズにも目を向けて、自分なりに分析をしトレードの際の根拠を増やしていきましょう。

参考文献:横尾寧子著『イチからわかる!FXファンダメンタルズの読み方使い方』(成美堂出版)