円高とか円安とかよく聞くけど、100円が120円になったら円高で、100円が80円になったら円安だよね!?
その逆、100円が120円になったら円安で、100円が80円になったら円高よ!
なんだかよく分かんないなぁ!?
「円高(えんだか)」や「円安(えんやす)」ということばは、株やFXの取引では頻繁に使われることばですが、それだけでなく、私たちの暮らしの中でもよく耳にすることばです。
今回は、円高・円安の意味や、円高や円安になる原因、また、円高や円安のメリット、デメリットについて、分かりやすく解説していきたいと思います。
ファンダメンタルズ分析の1つとしてだけでなく、社会人として知っておいてよい、社会の仕組みの1つとして、最後まで読んで理解していただければ、と思います。
円高と円安
円高、円安とは
円高、円安とはどういうことでしょうか?
円高、円安とは、外貨(外国の通貨)に対して、円の価値が高いか低いかということです。
私たちが日常生活でよく耳にする、円高や円安とは対米ドルの場合がほとんどです。ここでは、世界一通貨量が多く、世界の基軸通貨と呼ばれる米ドルを例に考えてみましょう。
円高と円安の考え方は、1ドルを1ドルの商品に置き換えて考えると理解しやすくなります。
例えば1ドル100円で買えていたフライドポテトが120円出さないと買えなくなったとします。
一見、値段が20円上がったので円高になったと考えがちですが、そうではなく、円安になったのです。値段が20円上がったのは「円の価値が下がった、円が弱く(=安く)なった」からだと考えます。
今度は逆に、100円で買っていたフライドポテトが80円で買えるようになったとします。
この場合は、円安ではなく、円高になったのです。値段が20円下がったのは「円の価値が上がった、円が強く(=高く)なった」からだと考えます。
このように円安は、「円の価値が下がった、弱くなった。」、円高は「円の価値が上がった、強くなった。」と考えるとよいのです。
では、チャート上で円高・円安を確認しておきましょう。
チャートはUSD/JPYの4時間足です。
USD/JPYのチャートですから、このチャートは1ドルを買うのに円がいくら必要かということを表しています。したがって、価格は上に行くほど高く、下に行くほど安くなります。
しかし、円の価値は上に行くほど下がることになるので、相対的に上に行けば行くほど円安になります。
逆に、円の価値は下に行くほど上がることになるので、相対的に下に行くほど円高となります。
円高や円安になる要因
政策金利
政策金利とは
世界の国々には、その国の通貨を発行する「中央銀行」があります。
日本では、日本銀行(日銀)、米国ではFRB(連邦準備制度理事会)、ユーロ圏では、ECB(ヨーロッパ中央銀行)、英国ではBOE(イングランド銀行)がそれにあたります。
中央銀行は、国の物価の安定化や景気の調整のために金融政策を行います。そのひとつに「政策金利」があります。
政策金利は中央銀行が一般の金融機関に貸し付けを行う際の金利のことです。政策金利の上げ下げに伴って、一般の金融機関が行う企業や個人への貸出金利も変動します。
例えば、経済が冷え込み物価も下落傾向(デフレ)のときに、景気を刺激するために行うのが政策金利の利下げです。利下げをすることで、企業や個人の資金調達も容易になり、経済活動を活発化させることができるという仕組みです。
逆に、好景気で経済に過熱感があり、物価が上昇傾向(インフレ)のときに行うのが政策金利の利上げです。利上げになると、企業や個人は資金調達が難しくなるため、行き過ぎた経済活動を抑えることにつながります。
政策金利と通貨高、通貨安
政策金利は通貨高や通貨安といった為替レートに影響を与える大きな要因になります。
一般的に、利上げは、通貨高要因、利下げは、通貨安要因となります。
金利が高いほど、より有利な条件で運用ができるため、資金は金利の低い通貨から金利の高い通貨の方に流れるのが原則です。
利上げ→通貨高の要因
利下げ→通貨安の要因
ただし、2008年秋に発生した金融危機「リーマンショック」以降は、景気を刺激するため、日本だけでなく欧米各国の金利もほぼゼロに近い状況となり、「高金利=通貨高、低金利=通貨安」という原則も崩れがちです。
米国の政策金利と円高・円安
そのような中で、日本の円高・円安に最も影響を与えている政策金利は、米国の政策金利でしょう。
米国の政策金利はFOMC(連邦公開市場委員会)で決定され、年8回発表されます。
FOMCが、利上げを発表すればドルが買われ円が売られる要因となります。逆に、利下げを発表すれば、ドルが売られ円が買われる要因となります。
利上げ→ドル高円安の要因
利下げ→ドル安円高の要因
もちろん、為替相場の変動要因は複雑で、政策金利だけで全てが決まる訳ではありませんが、1つの目安として知っておくことは、決してトレードにマイナスに働くものではありません。
「リスクオフ」と「リスクオン」
近年は、グローバル化の影響で、ある特定の国だけが景気がいいという状況はあまり見られなくなり、世界全体の景気が同時によくなったり悪くなったりする傾向が強まっています。
先に挙げた「リーマンショック」は、世界全体の経済を巻き込んだ、まさにグローバルな金融危機だったといえます。
そのような中で、「リスクオフ」、「リスクオン」という金融用語が使われるようになりました。
リスクオフとは、世界経済全体にとって良くない何らかの事態が発生すると、世界中のハイリスクな資産が売られ、ローリスクな資産が買われるという現象です。
リスクオンとは、世界経済全体にとって見通しの良い事態が発生すると、ハイリスクな資産が買われ、ローリスクな資産が売られるという現象です。
リスクオフは、投資家自身がリスク要因から離れる(off)という意味で、リスクオンは、投資家自身がリスクの中に身を置く(on)という意味です。
FXの場合は、リスクオフの時はローリスクローリターンの通貨が買われます。具体的には、円、スイスフラン、米ドルです。
一方リスクオンで買われるのはハイリスクハイリターンの通貨です。具体的には、豪ドル、NZドル、カナダドル、ポンド、ユーロです。また、新興国通貨や高金利通貨として、トルコリラ、メキシコペソ、南アフリカランドも買われます。
経済指標
経済指標とは、その国の経済状況を数値化したものです。
各国の公的機関によって発表され、個人(家計)の消費活動、企業の生産・投資活動、公共投資など国の財政支出の3部門から構成されます。
経済指標の中でも最も影響力が強いのはGDP(国内総生産)が世界1位の米国の指標です。
最近は、中国経済も注目の的となっていて、悪いニュースが出ると、中国に資源を輸出する国や新興国の通貨が下落する傾向があります。
ここ10年間の最重要指標と言えば「米国雇用統計」です。
毎月第1金曜日(原則)の日本時間午後10時30分(夏時間では9時30分)の発表後は為替レートが変動しがちです。
予想よりも数値がよい場合はドルが買われ円が売られるため、ドル高円安になり、予想よりも数値が悪い場合はドルが売られ円が買われるため、ドル安円高になります。
予想より数値が良い→ドル高円安
予想より数値が悪い→ドル安円高
円高・円安のメリット、デメリット
円高のメリット・デメリット
円高のメリット
円高になると海外のものが安く買えるようになります。海外旅行や旅行先で買う商品のほか、輸入品も価格が下がり買いやすくなります。輸入物のブランド品や輸入物の食品を楽しむチャンスになるかもしれません。
日本は、エネルギー資源は乏しくそのほとんどを輸入に頼っています。円高によって原油やガソリンの価格は下がり、経費削減が可能になります。企業の経営にも良い影響を与えます。
円高のデメリット
一方、円高になると、日本からの輸出製品の価格は上がることになります。日本製の商品が売れにくくなり、日本企業にとってはマイナスになります。海外からの日本への旅行者も買い物がしにくくなり、観光地の商店などは不利な状況に置かれるでしょう。
円安のメリット
円安になると円高のときとは逆に、日本製品の外国への輸出や販売が有利に展開されます。海外向けの日本車などは安く売ることができて、輸出企業にはプラスに働きます。従業員の収入も上がることになり、景気にも良い影響を与えます。
円安のデメリット
しかし、海外から買い物をする場合には円安は不利に働きます。円高のときには安かった輸入品も円安になると高くなってしまいます。
デメリットは輸出で不利になる点です。海外からすれば円が高いと日本の物を買う時にそうでない時よりも多くお金を必要とするため物が売れなくなります。
まとめ
円安・円高
円安→相手通貨に対して円の価値が下がった、弱くなった。
円高→相手通貨に対して円の価値が上がった、強くなった。
円高や円安になる3つの要因
1.米国の政策金利
利上げ→ドル高円安の要因(ドルが買われ円が売られる)
利下げ→ドル安円高の要因(ドルが売られ円が買われる)
2.「リスクオフ」と「リスクオン」
リスクオフ→円高
リスクオン→円安
3.経済指標
予想よりも数値がよい場合→ドル高円安(ドルが買われ円が売られる)
予想よりも数値が悪い場合→ドル安円高(ドルが売られ円が買われる)
円高・円安のメリット、デメリット
円高のメリット:輸入品が安く買える。
円高のデメリット:輸出品の価格が高くなる。
円安のメリット:輸出品が高く売れる
円安のデメリット:輸入品の価格が高くなる。