FXは始めるのは良いが大損するのではないかという先入観を持っている人は多いと思います。
ヘッジファンドの存在もFXに対する不安感を増長させる原因かもしれません。
大きな資金を投入してぼろ儲けしている悪辣な投資家だと思っている人も多いと思いますが、ヘッジファンドを研究してみると、彼らほど基本に忠実に売買を行っている人たちはいないということが分かります。
何でも同じですが、如何なる時にも基本を抑えることが大切なのです。
ここではヘッジファンドが行っているFXで負けないための投資術について、基本的なノウハウについてご紹介したいと思います。
1 損切りは必須!
ヘッジファンドが行う最も大切なことは何よりもリスク管理を徹底的に行うことです。
FXは元本が保証されていないためにリスク管理が大切です。
ヘッジファンドや機関投資家は初心者でも知っている損切りを金科玉条のように厳守しています。
このリスク管理ができない人はFXに参入しない方が良いです。
損切りはやること自体は難しいことではありません。
FXの初心者でも知っていることです。
ポジションをもったら損切りを入れる、ただそれだけです。
このように、損切りは鉄則中の鉄則です。
損切りができない人が総合的に勝つことは不可能ですから、損切りをする時には売買する時の手数料と考えるようにしましょう。
最近では日本のFXは取引手数料が無料となっているものが多いですが、機関投資家に対しては銀行の為替取引手数料がドル円で1銭の手数料がかかります。
損切りする時は損をしたと思わずに、一回売買する時の手数料と思ってこまめにやるようにしましょう。
FX会社では損失が一定基準を超えると強制的に決済される機能がありますが、これを使ってしまったら損失は膨大になりますので、その前に損切りを入れるのです。
●損切りの入れ方
損切りの入れ方はチャート・ポイントが基準です。
チャート・ポイントとはチャート上の注目すべきレートのことをいい、損切りにおけるチャート・ポイントは、そのレートを切ると値が大きく下がる値のことです。
すなわちチャート・ポイントは多くの人が注目する値ですから、その値で損切りを入れると損切り注文が多発して思い通りに損切りができない場合があります。
ですから、損切りはチャート・ポイントよりも少し下の値ですることをお勧めします。
また、損切りは大きく設定しないことが重要です。
短期売買のドル円の場合は、1円(100pips)以内が良いですし、損切り幅は利食い幅よりも小さくしてください。
小さくしないと全体で利益を出すことは不可能です。
●損切りレートは変えない
チャート・ポイントを超えて含み益が増えた場合にはポジション量を上乗せするのが良いのですが、その時の損切りラインをどうしたらいいか悩むことがあると思います。
ここにも損切りラインの設定に対する明確な原則を持っておくことが重要ですし、その原則に従って機械的に損切りを入れることが重要です。
具体的に言うと、ポジションを上乗せした場合の損切りラインは、投資総額÷ポジション全体数=平均値を基準にそこから100pips以内で決めることが重要です。
例を挙げるとこうです。
最初に1ドル=100円で1ロットのドルを買った後、ドルが1ドル=101円に円安になったところで1ロット追加したとすると、平均値は100.5円になりますので、この平均値を基準に損切りを0.5円上昇させればいいということです。
2 利食いは大きく
損切りをきちんとできても、利益が出たところですぐに取引していては、全体としての利益確保はできません。
ですから、利益確保をするのは、損切りよりももっと大切だと言えます。
利食いは如何に大きく勝つかが重要ですので、トレンドに乗っている状態であれば、簡単に利益を確定するのは避けてください。
むしろ、ポジションを上乗せして利益の増大を狙うことが重要になります。
トレンドにうまく乗っても、ポジションを上乗せしなければ大きく勝つことは難しいです。
つまりトレンドのチャートポイントを抜けて利益が増大するようであれば、そこで利益を拡大するためにポジションを上乗せするのです。
実際に個人投資家がする上乗せと言えば、一般的に予想の反対方向に相場が動いた時に上乗せする、いわゆるナンピンが多いですが、これはむしろ損失を拡大するリスクが高まりますのでやらないほうがいいです。
●ピラミッディング(ポジションの上乗せ)とその注意点
利益が出た時、利益確保をどこで行うかは意外と知らない人が多いように思います。
上でも書きましたが、急いで利食いをするなということなのですが、特に利益目標を立ててその値を超えたら利食いする人がいますが、それはしないほうが良いです。
トレンドを見てトレンドが変わるところで利食いをすることが大切です。
つまりトレンドの向きが転換点を迎えたところで売却するのです。
しかし実際には、このトレンドの転換点を見極めることは容易なことではありません。
ここで利益を拡大するためにするべきことは、トレンドに乗ったと思ったらポジションを上乗せする(ピラミッディング)ことですが、その時に上乗せする金額は最初の金額以上には投入してはいけません。
また上乗せは何度もできると思わないほうが良いです。
そこまでトレンドが持続することを期待することは危険です。
せいぜい2度までとしましょう。
またピラミッディングをすると、平均値が上がるため、上がった分だけ損切りの基準をあげてください。
そうすることによって利益を拡大することができますから、これは忘れてはいけません。
3 勝率の見極め方
FXを始めて間もない人の中には取引回数で計算した勝率を50%以上にしないと全体でも利益を出せないと思っている人が多いですが、これは間違った考え方です。
多くの人は利益が出たら利食いをすぐにしてしまうために勝率で50%を超えないと全体で勝利できないと思っているのだと思われます。
しかし実際に勝っている人を見ると、1回の利食いで大きな収益をあげていますので50%以上の勝率を上げなくても全体で勝つことができます。
また、現実的にも勝率を50%以上にするということは容易なことではありません。
確率論的に考えて勝ち負けの確率は5対5ですから、それ以上の確率で勝利しようというのは、それ自体リスクのある姿勢だからです。
しかし、例えば4対6や3対7の勝率であったとしても、勝った時に大きな収益を上げることができれば全体で勝つことができます。
つまり、負ける時は損切りを入れているので最低の損失に抑えることができますが、勝つ時はポジションを上乗せするなどして利益を拡大するために、大きく勝つことができるのです。
ですから、繰返しになりますが利益が出ている時にはすぐに利食うのではなく、収益の極大化のためにあらゆる努力をすることが大切なのです。
4 順張りが基本
順張りとはトレンドに乗って収益を上げて行くことを言いますが、そのためにはトレンドが一定方向に動いている必要があります。
値動きの9割はほぼ一定のボックス圏で動いています。
つまりサポートライン(下値支持線)とレジスタンスライン(上値支持線)を行き来する相場が大半で、ボックス圏を抜けて上に行ったり下に行ったりすることは余りありません。
なぜかというと、ボックスの端の方にくるとその時点で、投資家は損切りをしたり利食いをしたりするため、相場が逆方向に動く(つまりボックスの内側のほうに動く)ようになるからです。
したがって、ボックス圏にある時には、サポートライン近くの上の値で買い、レジスタンスラインの近くの下の値で売るようにすることが必要です。
これがボックス圏における順張りの原則です。
しかしこれはまた、流れに乗らないと損をしますので相場としては利益を出しにくい相場だということができます。
しかし値動きがボックス圏を突破した場合は抜けた方向に大きく動く傾向がありますので、このトレンドに沿って行くことが重要になります。
ただし、もちろんこの場合にも、予想と違う方向に動くことがありますので損切りは自動的にするように入れておくことを忘れないでください。
5 注目すべき情報と対応の仕方
注目すべき経済指標は基本的にFX会社が提供する経済情報の中に入っていますが、特にアメリカの月初めの週の金曜日に発表される雇用統計は重要です。
それ以外にも以下の内容はヘッジファンドや機関投資家が特に注目している内容ですので個人投資家も注目する必要があります。
●東京仲値
東京仲値とは東京時間(日本時間)の午前9時55分の為替レートのことを言います。
この東京仲値で海外の機関投資家や日本企業は外貨を買うことが多いため、円と関係する外貨取引の値が変動しやすいです。
その中でも、例えば取引通貨がドル/円の場合は、五十日(5と10の付く日)や月曜日、月末にドル買いが多くなります。
東京仲値を活用した取引には、東京仲値の前でドルを買い、仲値時間の直後にレートが上がったところで売るという戦略がありますが、これは利食いの確実性が高く、簡単ですので個人投資家が良く行う方法です。
月末の東京仲値の動きについていえば、海外株式や海外債券で構成された新しい外貨建てファンドの設定は月末に行いますので、月末になると外貨を買う大きな動きがでますので注目する必要があります。
募集する目標金額に対して実際にいくら集まっているかということは個人投資家には解りませんが、通貨構成と募集金額で為替変動をある程度予想することはできます。
たとえばアジア株ファンドの新規設定であれば、当然のことですが「円売り・アジア通貨買い」となります。
ですから為替取引が行われる設定日には仲値に向けて外貨買い(つまり円売り)をする動きがでますので、その動きに沿って売買すればいいのです。
●IMM(国際通貨先物)
つぎにIMM(国際通貨先物)はシカゴ・マーカンタイル取引(CME)に上場されている商品ですが、これも世界中の機関投資家やヘッジファンドが注目している指標です。
これはヘッジファンドなどの投機筋を中心とした通貨取引の出来高などで、火曜日に集計されたものがその週のNY時間の金曜日午後3時30分に公表されます。
IMMの指標はシカゴの取引所での取引指数なのですが、実はこれが世界市場の縮図だと考えられています。
その理由は、ヘッジファンドなどの機関投資家は為替指数で取引する場合、一般的に先物市場で行いますが、シカゴ先物市場だけが為替取引の先物市場だからです。
つまり為替動向の予想をIMMを通して行うという訳です。
最近では、FX会社が配信する為替情報にもIMMが取り入れられることによって、個人投資家にも身近な数値になっています。
もちろん、CFTC(米商品先物取引委員会)のホームページでもIMMを見ることができますが、内容を正確に理解するには公表されている値を更に計算しないといけないため、FX会社が配信する情報で確認するのが良いと思います。
なお注意すべき点としては、火曜日の時点での数値が金曜日に発表されるため、情報の遅れには気を付けるべきでしょう。
●G7、G20、要人発言など
それ以外にも世界経済に影響を与える会議での発表や要人の発言は為替の動向に大きな影響を与えます。
例えば、G7、G8、G20などです。G7は先進7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議であり、G8はG7にロシアを加えたもので主要国首脳会談または、通称サミットと言われています。
これに新興国を加えたG20でも為替問題や金融・経済問題について言及されます。
これらの会議は一般的に週末に行われることが多いため、週明け月曜日の早朝は特に注意してください。
またこうした主要国際会議とは別途に、為替レートは各国要人の発言によって大きく変動することがあります。
例えばアメリカであればFRB議長・理事、財務長官、日本では財務大臣、財務官、財務省国際局長、欧州ではECBの関係者などがそれに当たります。
特にFRB議長の発言は世界市場に影響を与えるため、発言している途中にも、内容が微妙に変化していくたびに激しく売買が行われるほどです。
ですから個人投資家の場合は、主要指標の発表だけでなく主要な国際会議の前や要人発言が行われる前には事前にポジションを決済しておくのがいいと思います。
決済してマーケットが落ち着いてから再度始めたほうがリスクが少ないと思われます。
●ロンドンFix
最後に、ロンドンFixとはロンドン・フィキシングのことですが、これはロンドン時間の午後4時に決まる各通貨ペアの為替レートのことを言います。
日本では特に「ロンドン4時為替」と言われたりします。
ロンドンFixは、日本では年金を運用する機関投資家が注目しています。
日本の年金運用のファンドマネージャーはロンドンFixのレートを見て米ドルなどを購入しますが、東京時間での為替レートとの差で収益や損失が出ます。
世界の投資家はロンドン時間の午後4時に向けて為替取引をしますし、ロンドン市場も同じ午後4時に向けて取引をしますので、日によっては大量の物量がこの時間前後に動くことがありますので、為替レートが判断が難しい動きをする場合がありますので注意してください。
最近の傾向として注意すべき点は、国際的に円の影響力がなくなって円売りをする機関投資家が多くなっているため、ロンドンFixは外貨買い(円売り)になる場合が多いです。
具体的にはロンドン時間の午後4時の1~2分前から円が買われ始めて、午後4時で売るということです。
なおロンドンFixは特に月末営業日には機関投資家はポートフォリオの組み入れ比率を調整しますので、物量が大きく動きますので注意が必要です。
日本の機関投資家もこの時には同じ目的で円に買い戻しますので、外貨買いを個人投資家がするのは控えたほうがいいでしょう。
●サプライスでの対応の仕方
しかし実際にはこうした指標が発表される前に、市場に出回っている噂によってレートが動く場合が多いです。
実際の指標が事前予想を反映している場合は、すでに現在のレートに事前予想が織り込まれているためにレートは変動しません。
しかし事前予想よりも実際の指数が良かったり悪かったりすると、その分、レートが大きく変動しますので、重要な経済指標が発表される時には、個人投資家は特に注意しなければなりません。
市場予想が実際の数値と大きく違って相場が大きく変動することをサプライズと言います。
また、時には指数が発表されてもレートがほとんど反応しなかったのに、時間を置いてしばらくして大きく変動する場合があります。
これは最初の指数発表の時にはよく分からなかったが、その内容を細かく見てみると重要な動きだと判断されて、その後急に相場が動くということです。
サプライズがある時にはドル円相場で1円以上動くことは驚くことではありません。
相場を研究する人は、経済指数などの発表をどう解釈するかということよりも、まず市場がどのように動いたかを見てその動きに従って行動することが重要なのです。
ですから、特に個人投資家の場合は、経済指標を予想して売買するのはやめてください。
サプライズが予想と反対に動いた時、損切りをすぐにしたくても、値動きが想像以上に大きくなって、損切りをしたくてもできず大きくスリップして大損する場合があるからです。
特に重要な経済発表の前にはポジションを売却してリスクがでないように抑えるようにしてください。
取引は発表後にもう一度始めれば良いですし、その後の取引方法や損切りの仕方などを変える必要もありません。
まとめ
以上、ヘッジファンドや機関投資家が基本と考えている内容を、損切り、利食いの仕方、勝率の見極め方、順張りの大切さ、重要な情報(指標や要人発言など)に分けて簡単に説明してきました。
最初にも述べましたが、ヘッジファンドは暴利をむさぼる投資家ではなく、ヘッジをきちんとしている投資家です。
個人投資家が勝利しないのは、情報の不足さもありますが、それ以上に、ヘッジを管理できず大きな利食いができないところにありますので、上の内容を熟知して勝利できるように鍛錬していきましょう。